厚生・労働要求へ
生保控除認めず
厚生・労働両省は25日、国民年金の未納・未加入者については個人年金の生命保険料控除を認めないことなどを盛り込んだ来年度の税制改正要望をまとめた。公的年金への非協力者には税制面
でのペナルティーえお科すもので、未納・未加入者問題に手を焼いていた厚生省が苦肉の策として異例の増税要求に踏み切った。これが実現すれば、大蔵省がめざしている生命保険料控除の全面
廃止にも道筋が開けることになるが、優遇措置を一部はずされる形になる生命保険業界は反発を強めている。
生保業界は反発
国民年金法は、20再以上の被保険者に保険料の納付を義務づけている。しかし、年金制度に対する不信感などから、国民年金に加入していない者は約100万人、加入していても2年以上保険料を支払っていない者は約170万人に上る。自営業者など国民年金の対象者のうち、13%が未納・未加入者という計算だ。
厚生省はこれまで、こうした事態は公的年金制度の基盤を崩すものとして、未納・未加入者に対して保険料の納付を求めてきた。しかし、改善の兆しが見えなかったため、今回、「ものごとには優先順位
がある」(厚生省幹部)として、公的年金の保険料を理由もなく支払わずに民間の個人年金に加入する場合には税制の優遇を認めない方針に踏み切った。
具体的には、年間の払い込み保険料に応じて5万円までの所得税と3万5千円までの地方税が控除される個人年金の生命保険料控除の対象者から、国民年金の未納・未加入者を除外することになる。
社会保険庁が国民年金保険料の納付証明書を発行し、控除を申請する際に証明書の提出を求めることで対応する。社会保険庁の調査では、未加入者の17%、未納者の4人に1人は民間の個人年金に加入している。今回、控除が認められなくなる対象者は50万人程度になると見られ、数億から十数億円の増収になるという。
生命保険料の控除廃止は、これまで、たびたび議論になってきたが、生命保険業界が「保健加入者にとって増税になる」などと反発し、実現の運びとはならなかった。だが、今回の税制改正要望は、問題化する公的年金の未納・未加入者を限定して適用するため、来年度の税制改正で認められる可能性がある。
生命保険協会の宇野郁男会長は25日、「国民年金の未納・未加入者問題の解決の為には、制度の周知徹底や公的年金の将来に対する国民の不安感を取り除くことが先決だ。この問題は個人年金保険料控除とは全く別
次元の問題で、懲罰的観点から控除見直しを行うことには強く反対する」とのコメントを出した。
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