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健康【無関心派】が変身
                  2000.8.24(木)朝日新聞より引用

熊本県蘇陽町 推進運動の旗振り役に
  健診受診率97% 老人医療費抑制効果も

 「九州のへそ」と呼ばれる熊本県蘇陽町は、阿蘇の南側、宮崎県との県境にある。人口五千人足らずのこの町は、もう十二年になる「健康づくり」でも知られる。
  「健康づくり」は最初、高齢者の在宅サービスの充実など町手動で始まった。ただ、町の事業計画に沿って国や県の補助金を元に事業を進めてもあまり身になるとは思えない。この町の取り組みがユニークなのは、文字通 り「住民参加」を押し進めた事だ。

むら長制度
  町の職員と住民が、酒を酌み交わしながらの議論を始めてみた。すると、女性たちから「健康づくりに関心のない男性を地域のリーダーとしてはどうか」という意見が出た。それをきっかけに、町内二十七地区から一人ずつ、健康に無頓着な男性を「健康むら長」に選んでみた。
  行政と住民のパイプ役であるむら長は、まず地区の住民に健康診断の受診を呼びかけなければならない。そうなると、「不健康では示しがつかない」という気持ちになりそうなところがみそだ。
  七年前からむら長を務める工藤光盛さん(72)は、「むら長になったころは、太りすぎで高血圧、高コレステロールだった。肉は食べ放題、酒は飲み放題だったからねぇ」と苦笑いする。保健婦の指導を受け、菜食を増やし、晩酌は一合までとした。今では全て正常値に。工藤さんが「自分の体は自分で守っていかなきゃならん」と、若い人たちに呼びかけるのも説得力を持つ。
  むら長たちは、住民の健康意識を高める取り組みも実行した。勤め人も参加できるように日が暮れてから始める「健康学習会」では、健康づくりから介護、環境問題などと多様なテーマについて、医師や保健婦、町職員らが講師になって住民が意見を交わす。禁煙推進運動や献杯廃止運動、モロヘイヤの自家栽培普及運動などは、むら長から出たアイデアだ。

喫煙率減る
  むら長制度ができて十年余り、蘇陽町の健康診断の受診率は九七%になった。1988年と98年を比較をする人の割合は24%から90%に、喫煙しない人は71%から82%に、65歳以下で死亡する人は、22%から16%に、と改善した。全国的に急増している70歳以上の老人医療費は、十年以上にわたってほとんど増えていない。
 
「健康づくりの主体はむら長を中心とした住民で、行政はその要望に応えて支援する。ほかの町のモデルになるようなことを考えれば、国の予算は出るものなんですよ」と同町の坂本美喜雄健康生活課長。むら長制度を運営するのに毎年150万円程度が必要だが、そのほとんどは国の補助で賄っている。
 
一方、この金の出所になっているのが、厚生省の地域保険推進特別 事業費だ。地方レベルのモデル的な健康事業を全額補助するために十年前に設けられた。今年度の予算は約37億円。今後10年間の健康づくり運動として今年3月にまとめられた「健康日本21」の地方レベルでの取り組みを重点項目の1つとしている。
  健康日本21は例えば、「20〜60代の男性の肥満者を現状の24.3%から15%以下にする」などといった、食事や飲酒、運動など日常生活における具体的な目標値を設定しており、がんや脳卒中、糖尿病など生活習慣に密接に関係する生活習慣病対策の切り札とされている。

見直し対象
  厚生省健康日本21推進本部の佐柳進事務局長は、「健康づくりは基本的には個人の問題だが、やはり環境整備は重要だ。地域ごとにそれぞれふさわしい目標値を定めて実行することで効果 が上がる。」と話す。
  もっとも、生活習慣病に対する関心は高まっているのに、地域保健推進特別 事業の予算枠は昨年度42億円から減っている。大蔵省が「奨励的」な補助金を見直す方針を示しているからだ、「地方自治体の創意工夫に任せる事業なので、見直しの対象とされてしまう。来年度分も減らされてしまうのでは……」と担当者は心配している。

【コメント】
 21世紀は、人類全員が健康に取り組む時代になると確信していることは、ホームページ内やオアシス会員に再三申し上げておりますが、熊本県蘇陽町の町づくりは、現在世界のモデル的存在であり、今後形を変えて急速に全世界に広がっていくだろうと私は予測しています。

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