2002年度導入へ厚生省検討
負担増招く恐れも
厚生省は、サラリーマンらが月給から一定の料率で天引きされている健康保険料について、ボーナスも含めた年収を基準に徴収する「総報酬制」に変える方向で検討に入った。
年収に占めるボーナスが多いか少ないかによって不公平が生じる事態を是正するねらい。また、2003年度から年金保険料に総報酬制が導入されることに足並みをそろえる意味もある。同省では、2002年度に先送りした医療保険制度改革の一環として実現をめざす。この制度が導入されれば一時的に毎月の保険料率は下がる見通
しだが、逆に将来の保険料負担は重くなる可能性もあり、論議を呼びそうだ。
現行の医療保険制度では、月収に対する保険料は、中小企業の社員らの加入する政府管理健康保険で8.5%(これを労使折半)。大企業の社員らが加入する組合健康保険では、組合によって違うが、平均8.5%程度(原則として労使折半)となっている。ボーナスについては政管健保が1%(企業0.5%、社員0.3%、国庫0.2%)を徴収しており、組合健保も1%まで徴収できる仕組みだ。
これに対し、総報酬制は月給とボーナスから同じ料率で保険料を徴収する制度。全体の保険料収入を変えずに制度を総報酬制に変えると、同じねんしゅうでもボーナスの多い人ほど負担は重くなり、逆にボーナスの少ない人ほど負担は軽くなる。
現行制度では保険料を徴収できる上限が法律で定められており、40歳以上になると徴収される介護保険料も含め、政管健保で月収の9.1%、組合健保で同9.5%。高齢者の医療費をまかなう拠出金負担の増加などを反映して保険料率は上限に近づいている。総報酬制になれは、ボーナスに対する保険料率が上がるため、毎月の保険料率は下がる計算になる。だが、その半面
、保険料引き上げの余地は広がることになる。
厚生省によると、政管健保の場合、保険料の計算のもとになる平均月収は1998年度で29万円、ボーナスは57万円。これをもとに総報酬制にした場合の保険料率を計算すると、7.5%となる。ただ、保険財政の悪化から、制度変更が実現することには保険料率はさらに上がっていることも十分考えられる。
医療保険制度の改革をめぐっては、70歳以上の高齢者の医療費の自己負担を、現行の定額制から原則1割負担に変えることなどを柱とする医療保険制度改正関連法案が、先の通
常国会で廃棄となった。
また、自己負担分を除く高齢者の医療費を、各保険からの拠出金と公費でまかなっている現行の老人保健制度の見直しなど、政府が2000年度の実現を約束していた抜本的改革も2002年度めどに先送りとなっている。厚生省としては、総報酬制は、この改革と同時に導入したい意向だ。
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