健康研究サークル『オアシス』会報
オアシスだより 第33号 2007年11月
『オアシスだより第33号発行にあたり』
清野鍼灸整骨院院長 健康研究サークル「オアシス」会長 清野 充典

 2007年(平成19年)11月9日(金)10日(土)に、「西洋医学教育発祥百五十年記念国際医学史科学史会議」が、長崎大学医学部で開催されました。
1857年11月に、幕府の要請により訪日した長崎・出島の「商館医」ポンペが、長崎市内に設立された「長崎医学校」で、初めて12名の日本人に教育してから150年経過したことを記念して開催された国際会議です。
 1633年に徳川幕府が鎖国令を敷いてからも、出島にきたヨーロッパの科学者たちは、日本に多くのことを伝えました。これらはオランダ人によって伝えられたので、「蘭学」といいました。日本人がよく知る一人に「シーボルト(ドイツ人)」がいます。しかし、彼らは日本人と自由に交流できたわけではありません。話すことができたのは、幕府の役人と通訳や娼婦らごく少人数です。『解体新書』を書いた杉田玄白や前野良沢など、日本で有名な「蘭学医」達も、彼らと直接話したことはなく、皆通訳に質問し、通訳がその答えを伝えるというものでした。ヨーロッパ人からはじめて直接講義を受けたのが、1857年というわけです。その頃の日本人は、数学・物理・化学等の学問を全く知りませんでした。1870年からはドイツ医学に傾倒し、1945年からはアメリカ医学が中心になりました。現在、医学部で行われる医学教育は現代医学が中心です。
 江戸時代は、「漢学」中心でしたので、「中国の医学」が国家医療でした。「中国の医学・医療」は、鍼灸治療、漢方薬、按摩治療を指します。鍼灸治療は「鍼灸師」の手によって、「按摩治療」は「按摩マッサージ指圧師」の手によって継承されています。いわゆる「漢方薬」は、正式に教育されておらず、近年ようやく医学部にて選択授業で教えられている程度です。150年の間に、医療現場では立場がすっかり逆転しました。しかし、現代医学は科学による分析が進歩したにとどまっています。患者の病態を分析し「病名」をつけることが可能になったのは西洋科学の恩恵です。ただ、医療が追いついていません。病名をつけられても、治療法がないことが多いのです。

一方、中国の医療は、「体は「気」から構成されていて、気が乱れた状態を「病気」という。」という考え方から2000年以上経過した今も抜け出していません。医学の進歩はほとんどなく、観念論だけが先行しています。にもかかわらず、「医療」は飛躍的に進歩しました。「病気」を治すことが可能です。今の医学論は、身体の異常を治すことができる「鍼灸治療」を理解するためにできた理論なので、変更する必要がなかったのでしょう。実際、今私たちが治療する上で不便を感じません。そのため、医学の進歩が必要なく今を迎えています。 医学が進んだ「西洋医学」と医療が進んだ「鍼灸治療」を双方理解した医者が患者にあたることが、最善の方法です。最新の現代医学教育と中国医学教育を兼ねた鍼灸大学は、現在日本に5校あります。大学院は2校です。これからはもっと増えるでしょう。時代の要求に答えられる「鍼灸学士」「鍼灸学修士」「鍼灸学博士」がこれからの医療を支える日がすぐそこにきています。
 現代医学で確固たる治療法がない診断をされた方がおりましたら、時代の最先端を走る「清野鍼灸整骨院」に何なりとご相談ください。当院は、最新の鍼灸治療を開発しました。最大の特徴は、「内科疾患」に対応した治療です。肝臓・腎臓・肺臓・胆嚢・大腸等々でお悩みの方は、是非お声かけいただきたく存じます。皆様のお役に立つために、今日も研究を続けています。

2007年(平成19年)11月27日(火)現在 健康研究サークル「オアシス」会員 150名

目 次
鍼灸治療の効果をご存知ですか?(泌尿器編3)
鍼灸治療の効果をご存知ですか?(呼吸器編4)
鍼灸治療の効果をご存知ですか?(産・婦人科編4)
鍼灸治療の効果をご存知ですか?(消化器編3)

鍼灸治療の効果をご存知ですか?(泌尿器編3)
清野鍼灸整骨院 副院長代行 金親孝明

今回は、「前立腺肥大症」の鍼灸治療について紹介させていただきます。

「前立腺肥大症」は、膀胱の出口にある前立腺が年齢を重ねるごとに大きくなり、排尿障害をひき起こす病気です。60歳を越えた頃の男性に発症します。「前立腺肥大症」の初期では、肥大し始めた前立腺が尿道を刺激するために「頻尿」が起こります。肥大が進行するにつれ前立腺は尿道を圧迫し、尿の通りが悪くなります。そのため、尿に勢いがなくなり、排尿にかかる時間が長くなります。また、排尿後は、膀胱に尿が残るため「残尿感」を覚えるようになります。さらに前立腺の肥大が進行すると、最終的には前立腺が尿道を塞ぐようになります。すると尿意はあるのに尿が出ない「尿閉」や膀胱に尿が一杯になり、漏れ出てしまう「溢流性尿失禁」が起こります。残尿の中では細菌が増えやすいため「尿路結石」や「膀胱炎」等、痛みや不快な症状を伴う合併症が起きることがあります。尿が行き場所を失い腎臓に逆流すると「慢性腎不全」のような危険な合併症が起こることもあります。

「前立腺肥大症」の治療には、体の冷えをとり、自然治癒力を高める鍼灸治療が有効です。実際に西洋医学の治療を受けても効果が上がらず、鍼灸治療により症状が解消した患者さんは多くいらっしゃいます。 鍼灸治療では「前立腺肥大症」の患者さん の体には、強い「冷え」と「気力の衰え」が ある状態と病態把握します。皆様がご存知のように、尿は温かい液体です。尿が温かいのは、体から熱を受けて起こる現象です。体に強い「冷え」があるときは、尿が体から熱を奪うため、尿を長時間膀胱に貯めることができません。そのために「前立腺肥大症」の初期には「頻尿」が起こると考えます。尿の排泄と貯留には、一定の気力が必要です。強い「冷え」と加齢による「気力の衰え」が生じると「尿閉」や「失禁」が起きると考えます。治療では、下腹部にある元気を高めるツボ「関元」や膀胱の冷えを取る「中極」といったツボに鍼やお灸をします。すると体全体が温かくなり、元気が湧き、治療を重ねるごと に正常な排尿状態に戻ります。

「前立腺肥大症」など、排尿障害にお困りの方がいらっしゃいましたら是非当院にご相談ください。


「かぜ」について(下)
清野鍼灸整骨院  府中センター  院長 日吉 直之

前号は「内因によってつくられた体のゆがみは内臓を疲労させ、中でも腎・肺機能低下、心機能亢進されるとかぜになります。」という、内臓の機能が弱るとかぜにかかるという文で終えました。

今号はさらに詳しくその機序について説明します。
寒い時期は、冷たい空気がからだの外部にまとわりつき、皮膚の表面から冷えます。このとき肺の働きは、皮膚等の表面を引き締めて、冷気がからだの中に入らないように働きます。また、腎の働きは体液をコントロールすることによってからだの内を縮め、外からの冷気の進入を防ぎます。これら二つの働きが弱り、からだの内と外の守りがなくなると、冷えを皮膚の表面からからだの内部に引き込み、かぜの初期状態となります。このとき十分に体力があれば、咳やくしゃみ、身震い等をすることで皮膚の表面に冷えをとどめ、冷えが体内に浸入するのを止めることができます。くしゃみは、からだを温めるだけでなく冷えを体の外に放出させて、かぜ症状を軽くする作用もあります。また心の働きが盛んになることによって体温を上げ、冷えがからだの深部に侵入することを防ぎます。これが発熱の症状です。腎や肺の働きだけで冷えを防げないときは、肝の働きを用います。肝の働きが高まることによって発熱し、心の働きが血管を収縮させ、発熱する力を上げます。悪寒を感じると、肝や心の働きが一生懸命働き、熱を作ります。

しかし、内臓の疲労が強く、冷えの浸入を防ぐことができないと、皮膚の表面だけでなくからだの内部まで冷えてしまい、他の臓器まで冷えの影響を及ぼします。その結果、病は重くなり症状が複雑になってしまいます。インフルエンザ等のウィルス性のかぜも同様で、内臓の疲労が強いと体外からウィルスの浸入を防ぐことができず、排除するために高熱が出ます。熱を作る体力がないと、症状は悪化します。

咳・くしゃみ・発熱等はかぜを改善するためにおこる現象で、これらを薬でとめる行為は、体を治そうとする働きを妨げ、かぜを長引かせる原因となります。 かぜを治すには、しっかりと休養し内臓の疲れをとり、冷えやウィルスを排除できる体力をつけることが肝要です。

鍼や灸は、内臓の疲労をとり、からだを温める効果があります。
早くかぜを治したい方は、薬を飲む前に是非ご相談下さい。

参考文献 小林三剛.『東洋医学講座』第三巻.自然社.1980

鍼灸治療の効果をご存知ですか?(産・婦人科編4)「沐浴」について
清野鍼灸整骨院 院長 清野充典

 沐浴とは、湯水で身体を清める事、恩恵を受ける事の意味です。赤ん坊が入浴するときに用いられますが、赤ん坊を神聖な物として捉えているためにこの言葉が使われるのでしょう。  赤ん坊が空気にすぐ触れた瞬間(生まれた時)から1時間ぐらいが、この世に生を受け大気に順応するための大切な時間帯です。そのとき必要な物が「羊水」です。子宮から出てくるときに身にまとってくるものがこの大気に順応する力を与えてくれます。生きていく力が備わっているかを確認するには肺呼吸が行われているかがポイントです。出産後産声を上げられることがまず第1作業です。次に、1時間以上経過して羊水という無重力の水中から大気という気圧の元、肺で呼吸がうまく行われているかを確認しなければいけません。

人としてこの地球上での「命」の確実性を確認したのちに初めて行うのが沐浴です。ここではじめて身を清めるのでです。  最近の病院では忙しいためか、はたまたその事を知らないのか?出産後すぐ沐浴してしまうところが多いようです。お母さんや家族にすぐ対面させたいあまり、血の付いたままだとかわいそうだという営業的配慮もあるのでしょうかか?このことは胎児の免疫力を弱める残虐的行為だと個人的に声を大にしたいところです。多くの助産院では出産後ににすぐ沐浴していないと思いますが、病院出産が多くなった現代では、はじめてこのことを聞く人も多いことと思いいます。世の中がそんな流れですからね。本当に今の、世の中の知識レベルの低下、真実を捨て去り経済主体の風潮潮には、犠牲になる人が多いという範囲を超えています。やがて人類存亡の危機に繋がるのではないでしょうか?…といつも一人で憤慨しているのですが。

 話をもとに戻します。ここで日常の臨床の中で感じていることはその沐浴の時間帯です。入院している時は看護婦・助産婦さんが日中手の空いている時間にしてくれていると思うのですが、問題は退院後です。不調と思われる赤ん坊を連れて来院してくるお母さん方にお話をお伺いしていると沐浴の時間帯は様々です。毎日の時間帯が一定してない人も少なくありません。生活のリズムにかけらのない人もかなりいます。その中でも特に問題視しなければいけないのは沐浴する時間が夜遅いということです。

赤ん坊の沐浴は夕方まで、陽のあるうちに行うのが理想です。赤ん坊は体温調節がうまくできません。風邪を引かせないためにも気温の高い日中に行わなければいけません。入浴後の室温にも気を配る必要があるからです。暖房をして暖かいのとお日様の力で暖かいのとでは生命力を維持する力がまったく違います。古来より「夜気にあたってはいけない」という言葉に集約されています。その事を知らないお母さん方が大人のリズムに合わせ夜遅く沐浴していることが多いようです。

 赤ん坊は12時間以上睡眠をとらないと成長に支障が出ますから、夜7時には寝ていなくてはいけません。本来寝ているはずの時間帯に入浴させていると身体の調子が崩れてくると思いませんか?初乳を飲むと母児免疫がありますから、入浴が遅いぐらいで病名診断されるほど身体の調子が崩れませんが、退院後に夜遅く沐浴している赤ん坊は、

1. 身体が温まらなくなる。(暖かくない)
2. 便秘する。(便の回数が一日7〜8回から3〜4回、1〜2回へと徐々に減少)
3. 湿疹が出やすくなる。
4. 風邪を引きやすくなる。
5. 夜鳴きをする。
6. あまり手足を動かしたり、泣いたりしなくなる。泣き声が弱くなる。
7. 生後半年を過ぎ病気しやすくなる。



という状態に傾いていきます。毎日の問診を総合しますと個人的な見解として、

1. (退院後)夜10時以降沐浴している赤ん坊は、生後半年を経過してから上記の症状を呈しやすくなる。
2. (退院後)夜11時以降沐浴している赤ん坊は、生後5〜6ヶ月頃に上記の症状を呈しやすくなる。
3. (退院後)夜12時以降沐浴している赤ん坊は、生後3〜4ヶ月頃に上記の症状を呈しやすくなる。
4. (退院後)夜1時以降沐浴している赤ん坊は、生後2〜3ヶ月頃に上記の症状を呈しやすくなる。



ように思います。赤ん坊は生命力が旺盛ですので何時に入れても笑いますし、夜中におっぱいを飲んでいるぐらいだからいつ起きていても問題がないのだろうと深夜テレビをつけて赤ん坊を喜ばせている親もいますが、そのことが赤ん坊の成長を妨げ、大人になったとき病気しやすい身体になるという事を是非知っていただきたいと思います。

 

■鍼灸治療の効果をご存知ですか?(消化器編3)
ピロリ VS 天秤(てんびん)
清野鍼灸整骨院 副院長 小野寺啓

みなさん、「ピロリ菌」という言葉を聞いたことをありますか?

恐らく今現在知らない人がいないほど有名な菌ではないでしょうか?
今回はこの有名な「ピロリ菌」と「てんびん」そして「鍼灸治療」について触れたいと思います。
「ピロリ菌」(ヘリコバクター・ピロリ菌が正式な名称)は、オーストラリアの病理医R・W・ワーレンによって発見されました。今から30年前くらいの話です。
胃炎を起こしている患者さんの胃粘膜から菌を検出し、この菌が胃炎の 原因で、将来的に消化性潰瘍に移行する確立が高いと発表しました。

このワーレン先生の発表があるまでは、消化性潰瘍は胃酸の分泌亢進と胃壁の防御因子のバランスがくずれて起こる「天秤説」が主流でした。結果、このワーレン先生の発表により「天秤説」は完全に覆ってしまいました。
 現在、「ピロリ菌」を抗生物質で除菌することで消化性潰瘍が治り、再発も防ぐことができるという考え方が広まっています。皆さんも病院にかかった際、医師に「ピロリ菌」の除菌を勧められた経験があるのではないかと思います。
 しかし、この「ピロリ菌」除菌には大きな落とし穴があります。「ピロリ菌」の保菌者全員が消化性潰瘍になるわけではないからです。日本人の中年以降の70%が「ピロリ菌」を保有しており、その保菌者全てが消化性潰瘍にかかっていたら、患者さんは膨大な数になって病院はパンクします。
「ピロリ菌」により消化性潰瘍が発症して、除菌したら再発率が低下する。この2つは事実には違わないのです。しかし全ての保菌者が消化性潰瘍になるのではなく、除菌したらすべての患者さんが再発を防止できるわけでもありません。ピロリ菌の除菌は、あくまで難治性、再発性の患者さんには効果がありますが、大多数の保菌者にはほとんど意味がありません。

消化性潰瘍は、ピロリ菌感染が要因になっていますが、ストレスによる攻撃因子と防御因子のバランスの破綻も要因になります。消化性潰瘍には他にも多くの要因が存在します。 つまり、病気というものは1つの要因で発症するのではなく、いくつもの要因が重なって発症するのです。このことが最も重要なのです。

自身の病気の原因。あなたは御存知ですか?
鍼灸治療は、患者の体を診察して、重なり合った根本的な原因を分析し、病気を治療する伝統的な医学です。根本的な原因を治療することで素晴らしい効果が期待できると思いますよ。


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