東洋医学とは何か
第8回世界鍼灸学会連合会学術総会 オーストラリア・シドニー大会(本文)

日本・東京 
清野鍼灸整骨院院長
明治国際医療大学客員教授 
順天堂大学医学部医史学研究室 清野充典


【はじめに】

アジアでは、西アジア、中央アジア、東アジアでそれぞれ独特な伝統医療を有している。
東洋医学は、近年Oriental Medicine と呼称されることが多いが、本来Orientとは、西アジア地域を指す。
WHOは、2007年に東洋医学は、「Oriental Medicine」と呼称することを規定した。
その説明を「a general term for traditional medicine practiced in East Asian countries,e.g.,Japan and Korea」としている。
しかしながら、この規定はあいまいである。
東洋医学とは何かを検討したい。


【本論】
アジア全域に共通している思想概念に「気」がある。
インドの哲学書である『ウパニシャッド』や『ヴェーダ』にみえる「プラーナ」は、「気」と同等の辞である。
中国の医学が体系化されたとされる漢代までの書物に見える「気」と類似している。
「気」は、宇宙の基とされる思想であるが、人体に目を向けると「こころ」の作用を表す辞として用いられている。
また、宇宙と人をつなぐ「呼吸」と考えられる。
アジアでは、「こころ」の安定が健康の源であり、「こころ」の病が「病気」であるという思想背景にあると考える。


【考察】
 東洋医療は、こころの乱れから生じるからだのアンバランスを調整する医療である。
鍼灸治療は、「こころ」と「からだ」のバランスを調整することを目的とした医療であると考える。


【結語】
東洋医学とは、「気の医学」である。
「こころの病がまず生じ、その後にからだの病が生じるという思想背景を基に行う経験医療」を
研究する学問が、東洋医学であると考える。


<< 清野鍼灸整骨院(研究業績・刊行物・メディア)へ戻る